Study 2
 
研究その2:
やっとのことで「その2」がはじまった。今回はJiggsWhighamとの共演CD ”NICE'n'EASY”から。このCDは曲の解説書になんと譜例が載っている。コリャ−すごいと思ったがどうも納得がいかない。これでいいんだろうか。"IF I ONLY HAD A BRAIN " の Exsample 8 。すごい譜面だ。45小節目は2拍7連符、46小節目は4拍14連符。47小節目も4拍14連符だと。これがまちがっているとは言わないがフォンタナさんがテクニシャンだといってもそんなフレーズを吹こうと思ったはずはない。また記譜された音もスライドの移動を考慮すると無理がある。オレ流に解釈したコピー譜例(45-49小節)は下に示す通りである。
 
*注 ) ちなみにこのライナーノーツはKenHanlonさんという人が書いている。Hanlonさんはラスベガスで60年代からトロンボーンを吹き、今はネバダ州ラスベガス大学で教鞭をとっており、このCDの制作会社TNCのプロデュースもしている。トロンボーンの先生なのだ。だから逆らえない。念のため。

 


この3小節の研究
見ての通り、シンプルに16分音符だけである。なぜそうなのか?それは、はっきり言ってフォンタナさんでもこの速さでの16分音符連続がきつかったのである。舌がレロレロしちゃったのである。そのため16分音符がだんだん遅れていって4拍14連符という採譜をされてしまった。こう解釈するのが良いと思う。上記のコピー譜は「若いときだったらこう吹いただろう」という想定で書いた。つまり吹きたかったフレーズとして書いたのだ。さて、ほとんど聴き取れないフレーズをどうして上のような音の並びと解釈したのか?

それはフォンタナさんの定石というか、決まりフレーズから類推したわけだ。次のチャートは類推ネタの一例。今回よりも若干遅い "MILESTONES" (Recorded August 2-3, 1997 Carl Fontana - Arno Marsh Quintet WPCD51より)のアドリブ開始1コーラス9小節目のところである。

 


このMILESTONESからの研究
テンポは264なので16分音符ではなく8分音符である。この5小節を研究してみると、定石が3つ登場している。見ての通り「山」と言えば「川」と応える呼応が見られる。
まず一つ目の「山」の音列、
A-G-F-E-G-Gb-△とくれば・・・・・・・・・・これはF-△-C-Eb-E-△-F-△となる。
同様に2番目も、
C(又はC#あたり)-E-Eb-△ とくれば ・・・・・・・・・・D-△-A-C-B-△-Bb-△となる。場合によってはD-△-A-B-C-△-B-△となる。
三番目は音程ではなくシラブルでの「山」「と「川」であり、da-l-la-da-da-l-da-lとくればda-da!とぶっちぎって終わらせる場合が多い。
このようなことから類推していくことで、 "IF I ONLY HAD A BRAIN "の3小節はああなる。いかがでしょう?もちろんMILESTONESはホンの一例だ。キーだって違う。もっと類推に適したBbキーの早い曲もあるのだが、まあここはあえてMILESTONESとしてみた。
<譜例における「→」標記は? 、変な符頭は何?> 
X音符については前回のstudy1で説明したのでそちらをどうぞ。今回でてきた矢印は、スラーでもタイでもない。スライドを半音下げ(上げ)ながらタンギングせず「ah」と息のスピードだけでのタンギング(矛盾するなあ。シラブルか。アーティキュレーションかあ。まあいいや。)でそこにもう一つの音符があるかのように吹くのだ。グリッサンドともちがう。このパターンはよく登場しますんでよろしく。
もうひとつ、符頭が常識的な「斜め玉子型」ではなく、妙に細い角張った風体をしているところがあるだろう。これはビットが欠けちゃったわけではなく作為的にわざわざ描いたのである。意味としては「スライドの移動途上都合により、まあ、そのあたりの音程かな?」みたいな・・・・。つまりアバウトな表記にしたかったわけです。
と、ここで疲れたのでおわり。

HOMEに戻る